現在、日本は長期的な停滞に悩まされている。最近就任した管首相は小泉内閣のときに推し進めた政策を「行き過ぎた市場原理主義」と言い、当時の経済を担当した竹中大臣を批判している。池田信夫氏もいうように竹中平蔵氏はいたって「ふつうの経済学者」であった。彼や小泉元首相のおかげで日本の平均株価はそれ以前に底をうった値の2倍以上に回復し、失業率にも改善が見られた。むしろ、小泉首相の後に続いた安部首相や麻生首相によって、それまでの流れが崩れ、そこにかぶさるように金融危機が発生してしまったため、以前の姿に逆戻りしてしまったわけである。

働き方の変化
長期停滞に陥っている一番の原因は”雇用流動性”の低下である。技術革新によって雇用は常に流動し、成長分野に人員や頭脳を集めるのが理想の形は言うまでもない。しかし、日本は高度経済成長時にできあがった”終身雇用”を日本の伝統などと勘違いをして正社員の既得権を守り若者に参入しづらい構造を作り上げている。ここで簡単に雇用流動性の原理を説明しよう。

大昔、日本の人々は農耕をして自足自給の生活を送っていた。その中では、”豊かな土地”と”労働力”(つまりは人の数)をもつ者が力を持っていた。
そういった生活の中で徐々に農耕をするための技術が高くなっていった。道具がより最適化され、例えば今まで100人がかりで行っていた作業が30人で住むようになってしまったのである。
また、交通技術の発達により他の集団ともののやりとりをする貿易が始まった。

そこで先ほど技術革新により不要となった70人はすることがなく遊びほうけていたのだろうか。
そんなことはなく、新しい仕事を発見し、生活をどんどん豊かにしていったのである。

現在では生きるために必要な労働力はおどろくほど少なくなってきている。
そして、仕事の多くは廃業といっていいほど生活していく上では贅沢なものを作り上げている。

少し話を戻そう。
先ほどの余った70人とは言わば、失業者である。
彼らが、既得権に縛られ働き続けたらどうなっただろうか。
新しい、産業が発達することもなくもしかしたら未だに農耕をして自給自足の生活を送っていたかも知れない。

今の日本はまさにこのような状況である。
企業の労働者は組合をつくり、一度採用したら解雇しにくい仕組みを作り上げてしまった。
そんな中では雇用の流動性は保たれるはずもない。
それに追い討ちをかけるようにグローバル化の流れで新興国の安い労働力が豊富にある。
そうなると、日本人の正社員を雇うことを企業が拒み、海外移転して中国やインドなどの安い労働力をつかうようになる。

技術の変化

技術と働き方は相互に関連しあっている。農耕では機械化によって大幅に効率化されたし、オフィスではPCによって多くの雑務が解消されていった。最近では、スマートフォンやタブレット端末の台頭やgoogleなどの企業が提供するIaaSが技術の変化の代表である。
これらの技術の変化は具体的にどのような変化をもたらすのか。
IT化に伴う情報技術革新は商品やサービスのメニューを変えただけでなくビジネスプロセスそのものに変化をもたらした。
1つの企業がいくつ者機能を丸抱えにするよりもそれぞれの企業は特定小数の機能に業務を絞り込み互いに分業体制を組むといったあり方をより効率的なものにし、分解を促進した。

最適な企業規模とは
最適な企業規模は行う事業によって異なるのが普通だ。トヨタみたいにグローバル的に物を販売する会社は規模も大きいし、逆にトヨタに自動車の部品を売るような企業はニッチな市場で動いているので企業規模は一般的に小さい。
池尾和人氏によると最適な企業規模は
・内部コスト(管理コスト)
・外部コスト(取引コスト)
の総和を最小化する規模であるといえる。
一般的に考えて、小さな企業では会社内での情報伝達や意思決定に対するコスト(内部コスト)は小さい。その代わり、自社でやれることが少ないために多くをアウトソースしなければならなくなり外部コストが増大する。
大企業の場合はこの逆が当てはまる。

情報技術革新は内部コストと外部コスト両方を下げる働きがあるが、一般的に後者を下げる働きのほうが強い。
そうすると企業の規模というのは小さくなっていく傾向にある。

長くなってしまったので続きは次回