以前からこの種のエントリーを書きたいと思っていたのだが、なかなか書けないでいた。 その理由として、僕自身ある事象に対して向き合うときに抽象化すべきか具体化すべきか、はたまたどちらとも取り入れるべきか、取り入れるときのバランスはどうしたらいいのかと、色々悩んでいたからである。例えば、自己啓発本はある成功者の習慣をピックアップして、この習慣を身につければ成功できるといったことを書いて売りにしている。これはどちらかというと抽象化の行為である。

もちろん演繹法・帰納法という全く反対からのアプローチ法が両方確立しているように、どちらも蔑ろに出来ないのは確かである。ただ、今の世の中を僕なりに見る限りあまりにも「抽象化」することが多いように思えてきた。 それと同時に物事を個別に分析する手間を怠っていることで、全体の空気として正しいと思われていることが、突き詰めれば間違っていたり論理の飛躍だったりすることが多々あるのではないだろうか。

なぜ抽象化することが多いのかというと、それは単純に考えるのが”楽”だからである。「Appleはデザインから機能にいたるまで無駄を極力排除した革新的なガジェットを創りだしたから世界一の企業になった」というのは正しい。しかしこの抽象的な事実がどの企業に当てはめてもうまくいくものではないし、あまりにも漠然としている。

世界的にベストセラーになった本に「ビジョナリー・カンパニー」という本がある。 この本は、世界的に成功した企業がどのようなビジョンを持って事業を行っていったのかという法則性をいくつかの企業例を用いながら説明していくものである。もちろんこの本の筆者は本書で書かれたいる何倍もの企業を研究し、そして分析した結果を抽象化して書かれているのだが、この本を読む私たちにはその事は分からない。 単純に本書をありがたがって、これで成功企業の傾向が分かると思ったら大間違いである。

抽象化の罠に陥らないようにするためには”自分で考える”・”数値に基づく”といった方法が不可欠である。どちらも慣れてない人にとってみればすごくめんどくさい行為であるが、抽象化の罠に陥らないようにするためにはそれしか方法がない。むしろこのめんどくさい行為を習慣化することによって、人よりも深い洞察力や解決力を持って、仕事にも幅が出るのは間違いない。

ここで、そういった思考を養うために役に立つ本を最近読んだ本の中から2冊ほど紹介したい。

自分のアタマで考えよう
ちきりん
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 360

アルファブロガーであるちきりんさんの著書である。考えるとはそもそもどういったことを指すのかということや、どういったアプローチ方法をとればいいのかといったメソッドが書かれている。彼女のブログは常に人の意見に左右されずにゼロベースで考えられた持論を展開しているので人気がある。その思考法がつまった本である。




デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 365

本書は、いわゆる経済学書である。デフレの要因は国際競争力とかそういったものは関係なく、働いたり消費したりする年齢の人口が減ってきているからだという説を主張している。経済書としても有益であるが、僕がおすすめしたいのは結論に持って行くまでのアプローチ方法である。本書で用いられているデータは誰でも簡単に手に入るものばかりであるが、デフレの正体を人口の波で的確に説明している人は少ない。それは、単純に数字を読まずに分析もせずに空気で物事を判断しているからにほかならない。本書は正しい思考法を知るためのうってつけの本である。


Add to Google
Subscribe with livedoor Reader
My Yahoo!に追加
はてなアンテナ登録



このエントリーをはてなブックマークに追加