かつての世界は、地理的に近い範囲で「村」のようなコミュニティーを作って生活をしていた。そこには一般的に男が狩りをして女が子どもを育てたり料理をするという役割があった。体力面なのか遺伝としてなのかは定かではないが、それぞれの得意分野に特化した役割をもち、暗黙の了解のような交換条件が存在していた。

そのうち「村」と「村」で交易を行うようになった。A村でしかとれない果物をB村のめずらしい穀物と交換するようになったのだ。それがどんどん広がっていって、物々交換では非常に手間がかかるということで歴史上最大の発明とも言える「お金」が誕生した。お金が誕生したことにより、交換は食料や生活必需品に限らず、お金と労働力を交換したり、お金同士も交換するようになっていった。

 交換することで自分ではつくることの出来ない料理を食べたり、自分だけでは一生辿りつけないような場所に旅行をしたりといった経験を非常に少ない交換価値で出来るようになった。 

例えば、あなたがマクドナルドでたった数時間、客引きもなんの工夫もせずに働いただけで、膨大な敷地の中にものすごい仕掛けのある夢の国で1日中遊べるお金を手に入れることができる。

しかし、より少ないものでより多くのものと交換できるようになったことで、以上に書いたような大原則を忘れてしまっている人が多いのではないだろうか。

仕事においては交換する価値のあるものを生み出していないにもかかわらず、より良い給料を求め、将来の保証や仕事のやりがいまで求める始末だ。交換としての仕事とは本来与えられた仕事をきちんとこなす労働力を提供した結果、それに見合った対価を給料として得るものであり、そのオプションとしてやりがいを求めることは不可に近い。優秀な人はサラリーマンであっても労働を提供するだけでなく、さらに社会に価値を生み出す。 そういった積み重ねによって交換のハブとなり対価としてお金が入ってくる仕組みなのだ。

本書は、世界の繁栄がいかに「交換」によってもたらされたのかという事について書かれている。歴史的事象について書かれているものであるが、先ほど述べたように実生活にも応用のきく普遍的な真理がそこにはある。次回はその真理をもう少し視点を変えて、「目的を達成するための交換」についてのエントリーを書こうと思います。

繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史(上)
マット・リドレー
早川書房
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