仕事もできてプライベートの遊びも満喫し、やりたいことを全て成し遂げるという素晴らしいバイタリティをお持ちの大前さんの、趣味である「旅」にフォーカスした本である。学生時代から旅行ガイドとしての経験を持っている大前さんらしく、旅のプロデュースはなかなか魅力的であり、あまり海外に出かけない僕としては非常に興味がそそられた。メインである旅行プランの提案も素晴らしかったのだが、一番刺激を受けたのは、冒頭で説明している旅行ガイド時代の大前さんの話である。

学生時代ブラスバンド部だった大前さんは、プロが使うようなクラリネットが欲しくなりバイトをして買おうと考える。大卒の初任給が1万円の時代に、トータルで14万円もするクラリネットを手に入れるために仕事として選んだのは当時、給料が破格に良かった「通訳案内業」であった。添乗員に必要な「通訳案内業」の資格を史上最年少で取得した後、アルバイトとして働くようになった。彼のガイドは非常に評判で、給料の他に客からチップもたくさんもらうようになり多い月は月収が20万を超えていたという。そんなわけで余裕でクラリネットを購入して、さらにはブルーバードの新車まで学生時代に手に入れた。

やはり伝説のコンサルタントとしての片鱗をすでにアルバイト時代から見せていた大前さん。どのように通訳案内業として評判を上げて行ったのか詳しくは本書を読んで欲しいのだが、やはり一番重要なのはチップを弾みたくなるほど満足させるということに尽きている。そのための工夫をたくさん凝らして、実績をあげていったのだろう。

職種によってはお金を払ってくれるお客と直接接点がないものも多い。プログラマもフリーでやっている人と会社で受託開発を行っている人とでは全く違う。ただ、世の中の流れとして組織よりも個人で活躍できる機会が増えていき、バックエンドは単純労働化されフロントエンドに立たない限り稼ぐということは難しくなってきている傾向にある。

お客を喜ばすために工夫を惜しみなくする大切さと、フロントエンドに立つ大切さ、両方を痛感した一冊であった。

旅の極意、人生の極意
大前 研一
講談社
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